「同性同士の結婚=同性婚、超OK!社会」
作:小笠原毅
『テレビやらネットで若者の貧困問題や非婚化のニュースを見るにつけ、僕はこう思う。
「同性同士の結婚、同性婚がOKになっちゃえばいいのになあ」
と。
もしも同性同士で結婚できるようになれば、もちろんまず最初にLGBTと呼ばれる(あるいは自称する)レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー等々のセクシュアル・マイノリティ達が利用するだろう。LGBT向け結婚サービス、結婚市場も栄えるから、経済なりなんなりが活性化する可能性も高い。LGBTにおける問題、差別、生き難さ、議論などが十分に可視化されもするだろう。
その次に、同性婚を利用する人達が出てくることを僕は想像する。つまり、結婚制度を利用する人達、結婚してる状態でしか受けられないサービスを受けるために同性同士で結婚する人達の出現。言うなれば「偽装同性婚」「友情同性婚」「互助同性婚」などである。もちろんそこに性愛は絡んでいない。身もフタも無く言えば、別に毎日同性同士の夫婦として出かける時にキスする訳でもセックスに励む訳でもない。あくまで制度の利用。
話を単純化すると、ここに二人の貧困問題を抱えた若い男性がいたとする。彼らは同性婚してしまえばいい。それだけでもありとある問題が解決できそうな想像、膨らまない?
しかしここで、僕の頭の中の人がこう言う。「そんな、若い男性同士が一つ屋根の下で結婚生活しているなんて、想像するだけでも気色悪い……」。そういう人は想像力が逞しすぎる。言っているでしょう、はじめから。「制度利用としての結婚」だと。
あくまで制度利用のための結婚だから、彼ら二人は互いのセクシュアリティを互いにおのおの求めあっていけばいい。一方は風俗へ行ったりすればいいし、一方は秋葉原へ行って萌えていればいい。制度利用で便宜上結婚して同じ場所で暮らし合うことが色々都合いいだけなんだから。
それにこうした貧困問題を解決するための同性婚は、最初から離婚を視野に入れたっていいんだ。二人の若い貧困男性が、それぞれに本当に結婚したい女性(あるいは男性)を見つけるまで、ひとまず「互助」のために結婚する。そして見つかって、互いに貯金がたまったり足場が固まったりしたら、そこで晴れて離婚をし、性愛の下に結婚したいパートナーと結婚する。いいと思うんですけどねえ。
第一その想像をして気色悪さを覚えることそれ自体は、同性愛排除、ヘテロ(※異性愛)至上主義の思考回路以外の何物でもない。「だけど、万が一って事もあるじゃないか、制度利用のためだけに結婚したはずの二人の男が、一緒に生活しているうちにヘンな気分になってきてっていう事が……」なんて言うのかもしれないが、じゃあ言ってしまうけど、いいじゃないそれで。何の悪い事があるの。同性同士の気の置けない友達だと思って結婚したけど、いつのまにか愛が芽生えた。それだけですよ。偽装結婚から本物の結婚生活へ移行するだけでしょ。むしろ良い事。
というか、あのねえ。性も愛もその形も、君達ヘテロ男子からズリネタ&勃起原動力として正邪を審査されるために、存在してる訳じゃないんですが。何でもかんでもAVジャンルへと回収しないでいただきたい。
また、男性のひきこもりなんかは、ものすごく保守的なジェンダーやセクシュアリティなどにとらわれて身動きできなくなってたりする。彼らは時に「自分は男であるくせに」という大前提つきで「ああ、こんなひきこもりやってちゃだめだ、でもどうにもならない」というスパイラルに陥っていたりする。
そこで、社会側が「同性婚、超OK!」という空気になり、日常に同性婚が参入きてしまえば、「男のクセに」というのはあらゆる場面で少なからず軽減される。最終的には、ひきこもりのジェンダー&セックス観にも影響していくだろう。そしてそれはきっと、ひきこもりからの脱出に繋がる人が出てくる現象としてあらわれてくる。(もちろん、ひきこもりがひきこもり状態から抜け出すこと、それをもってして「人として最も正しい社会的適応」とする考え方そのものには疑問だが)
それに、ぶっちゃけ、何だかんだでヘテロ男子でも「男友達同士で一生暮らしていけたらなあ。女なんてメンドー」とかヘテロ女子でも「女の子同士で結婚しちゃいたい!楽しそう!」だとか、あるでしょ。(まあこれもこれである種問題ではあって、特にヘテロ男子がなぜそう思わなきゃいけないかっていうのも、いまこうして僕が書いている事と十分に関係してくるのだけど)
また、性愛をもたないとされる無性愛者の、一部の人達は、結婚や恋愛や、時にLGBT問題を啓蒙する人達の活動・言説にさえも「性愛を持っている事こそが人としての印」として受け取らされ、傷ついてしまうところがある。しかし社会的に愛の最大の印とされる結婚が「同性婚超OK!」という形を持ってして常識を打ち崩すことになってしまえば、無性愛で悩む人達にとっても肩の荷がおりることになる。
若者の貧困、非婚、ジェンダー、LGBT、無性愛、政治、ニート、ひきこもり、家庭と親子、戸籍、差別、宗教、右&左、自殺、ユニークフェイス、etc……。これらが「同性同士の結婚、超OK!」という事”だけ”で一気に可視化され、そして”再び”議論として浮上してきて侃侃諤諤のやり取りがなされる。”当事者”も参加しながら、今までなあなあでうっちゃられて放ったらかしにされた問題&分野が目を背けたくなるほどに浮きあがってくる。もちろん、これまでヘテロ社会において問題とされてる事柄を、細々と引き継ぎながら。
ただし「同性婚超OK!」が実現することで生まれてくる新たなマイノリティも必ずあるだろう。例えば「同性同士の結婚なんて気色悪い」というのが、本当にどうしようもないほどに生理的嫌悪に根ざしている人。そういう人が今度はきっとマイノリティとして追いやられてしまう。そうした人はどうすればいいか?そういう人に対しては多分きっと「同性間の性行為を想像しすぎる人は健常者と比べて先天的に脳に違いがある」という”トンデモ”言説だとか、あるいは「同性婚が理解できない子供の発達はウンヌンカンヌン」なんてのが出てくるだろう。また愛の下に結婚する同性愛者達の一部には「愛もないのに制度利用のために結婚するなんて日本人として間違ってる!」なんて騒いだりする人も出てくるかもしれない。
でもそこまで先を行く想定は、今現状の段階ではまだSF小説にしかならない。今考えるべきことは「あと一歩で全然SF小説じゃなくなる」ようなこと。それなんだ。』
……なんてことを毎日想像してはウダウダと考えている僕、30歳。高卒。元いじめられっ子。無職ニート。ひきこもり。同性愛者。アダルトチルドレン。宗教被害者。明日もたぶんウンコを製造しながら、生きてしまっているに違いない。山田花子の自殺直前日記でも読もうっと……。
