投稿原稿 煙草
投稿原稿 「煙草」
作:きょこち
煙草を吸い始めたのは、たしか19歳の時。
ライヴに一人で行った日だった。
家は親が厳しかったし、私はいい子だったからそれまでは一度も吸った事はなかったのだ。
ライヴ会場に行く途中で、如何にこのライヴを楽しめるかを想像した。
1ドリンクはチケット込みでつくからいいとして・・・。
ちょっと一人だと手持ちぶさただな。
・・・・・。
やっぱり、アレに挑戦してみよう。
近くに煙草の自販機を見つけた。
何にしようかな。
じっと見る。
えいっと気合いを入れてマルボロライトメンソールを購入。
ライターはキオスクで買った。
なんで、マルボロライトメンソールにしたのか。
誰かがそれを吸ってたからだと思ったけど忘れた。
ともかく私は買った煙草をバックに潜ませてライヴ会場へと向かった。
ライヴが始まり、周りの人は思い思いに音に身体を任せて踊り始めた。
誰も私を知らない。
この小さな箱の中でだけ私は自由だ。
バックから煙草を取り出し火を付ける。
ちょっと吸う。
あり、むせない。
初めて吸うとむせるっていうけど。
もうちょっと吸う。
大丈夫だな。
一人で決めて何かをやるって気持ちいい。
煙草をぷかり。
またぷかり。
この夜の間だけ私は私に戻れた気がした。
当時の私にしてはかなり勇気のいる行為だったけど案外やってみるとこんなものかという感じだった。
ただ、沢木耕太郎の「また一つ自由になれた気がした」という文章が青臭かった当時の私の心にもご多分に漏れず浮かんでは流れていった。
もう、年齢的には大人。でも私の中身は子供のままだ。煙草を吸って少し背徳の味を覚えた。
それから私は自由になりたいと思うと、煙草を吸うようになった。
身体に悪いから、後ろめたさを感じながら。
いつか、本当に自由になったら煙草をやめられるだろうか。
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