「オールニートニッポン」の運営など、過去2年間に若者たちを取り巻く社会環境-とりわけ雇用問題-について、若者たちの声を社会に発信してきて感じるのは、若者の孤立化が急激な速度で進んでいることだ。
派遣のような期限の決められた働き方では、安定的な人間関係はなかなか生まれない。3ヶ月や半年、長くても2年、3年で職場を転々としていく。しかもそれが自分だけではないから、孤立化に一層拍車がかかっていく……。
昨日の秋葉原の事件についてネットでいろいろ調べたりして、孤独が絶望を生んでいるように僕には思える。静岡のど田舎で自動車部品工場で働きながら、派遣会社が用意した単身者用住居に住み込みで働く生活は、どれほど寂しく、苦しいものだろうか。
学生時代に、父島の海洋牧場で1ヶ月ぐらい、ハマチの養殖をしたことがある。容疑者と同じように、会社が用意した単身者用住居に住み込みだった。あの時は、寂しかったけれど、すぐに友達もできたし、地元のカフェバーで働く真帆ちゃんという女の子に恋をしていたから、割と楽しく過ごすことができた。ただし、それはきっと僕の生来の明るさや社交性、それから1ヶ月という期限の決まった就労だったことがとても大きかったように思う。
もし人と話すのが苦手で、あの4畳半の部屋に何ヶ月もいることになったら、どうなるのだろう?家に帰って「おかえり」と言ってくれる人が誰もいない毎日を、上手にやり過ごすことができるだろうか?
ここ東京にはたくさんの若者がいるけれど、みんな他人同士だ。だけどなぜだか、自分以外はみんな楽しそうに思えてくることがある。僕にでも、そんな時がある。その時、この部屋の暗闇に押しつぶされてしまうぐらいなら、武器を手に取ろう。そう思う人がいても、仕方がないような気がする。
……あのね、アメリカの転職率が高くてもあまり問題にならないのは、教会やNPOがしっかり地域にコミュニティを作っているからなんだよ。新自由主義経済だって、コミュニティやセーフティネットがあるから、アメリカではなんとか機能しているわけ。ところが日本には、会社以外に誰でも入れるコミュニティがない。その会社に所属することが、今はだんだん難しくなってきている。もう無条件では誰もコミュニティに入れてくれないのだ。どういうことなんだろうね?
ひょっとしたら、日本の若者は世界一孤独なのではないかと思う。ケータイやSNSで24時間誰とでも繋がっていられるのに皮肉だね。
今回の事件は、一つの始まりに過ぎないだろう。若者の孤立化を止めない限り、何度でもこんな事件は起きる。雇用環境の改善を含めた徹底した議論と、変革への一歩が踏み出されることを強く願う。
2008年6月9日
NPOコトバノアトリエ
代表理事 山本 繁
