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絶望男の逆襲 第26回「忍耐」

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第26回 忍耐
 
「絶望男」の発売日が迫ってきた。売れなければ俺は消え失せる。周囲の関係者にも落胆を与えるだろう。重圧が募る。強迫神経症が悪化の一途を辿っている。起こってもいない先のことに神経を尖らせ、怒りっぽくなっている。楽観できない。
 
弟が仕事を3日続けて休んだ。クレジットの支払いができなくなる。また食えるか食えないかを心配せざる得なくなった。母にその不安を話した。弟への間接的な非難だ。つい昨日のことである。
 
弟が母に告げた。腸の病気で手術と入院が必要だと。糖尿病もあるので、かなり厳しいと。俺は押し黙った。新たな重圧がのしかかったかのように感じた。
 
母は言った。「これからも大変だけど、勝美は自分のことだけ考えればいいから。クレジットだの家賃だの心配してもなるようにしかならないよ。主婦じゃあるまいし。もっと広い気持ちになれないかね…。うちのことは気にしなくていいよ」
 
俺は最悪、路上生活を想定していた。母はそうなっても仕方ないと言った。と同時に考え過ぎとも言った。母を見た。俺の繰り事に呆れかえっているようだった。
 
俺は浮わついていた。「作家気分」になっていた。実際は作家などではない。2冊目以降を出せて初めてプロといえる。謙虚さが足りなかった。
 
弟を非難した。いつもの休み癖と思った。彼の苦しみを想像すらせず。俺は自分の都合しか考えなかった。
 
気づかせてもらった。改めて思い出した。今の俺に必要なものを。
 
耐えろ。そして待つのだ。これまでの人生でもしてきた。忍耐。親父が暴れた。親戚に人間のクズ扱いされた。学校で、社会で、疎外された。俺は耐え続けた。ときが経ち、いつの間にか忍耐の精神を忘れていた。
 
本が売れずに消え失せたなら、また1からやり直す。コツコツと2~3年かけていい物を書こう。作家になど、なれなくても構わない。金にも執着しない。
 
母と弟がやり合った。何でもないことだ。腹が減っているだろうと母が弟に何か食べるように言った。テレビを見ていた弟が余計なお世話だと怒鳴った。過干渉な母親。その母を怒鳴る大人に成りきれない弟。むかつく。が、俺はこの家族と生きている。
 
家族は鏡のような存在だ。それぞれが自分の1部分なのだ。それを見極めるには客観的でなければ。客観的でありたいなら忍耐が必要だ。俺はそうありたい。
 
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いままでの「絶望男の逆襲」

2007.7.12 第1回「笑顔のない男」
2007.7.18 第2回「孤立感」
2007.7.23 第3回「天涯孤独になるまで」
2007.7.30 第4回「やせ我慢」
2007.8.8 第5回「絶望の根っこ」
2007.8.27 第6回「人間のクズ」
2007.8.27 第7回「登校拒否」
2007.9.3 第8回「昼夜逆転」
2007.9.3 第9回「無常」
2007.9.10 第10回「人から逃げよう」
2007.9.25 第11回「欝屈」
2007.9.25 第12回「願わくば」
2007.10.9 第13回「家族と孤独」
2007.10.22 第14回「歪み」
2007.10.22 第15回「否定できないもの」
2007.11.26 第16回「精神障害」
2007.11.26 第17回「だるま」
2007.11.26 第18回「母の贖罪」
2007.11.26 第19回「因縁」
2007.11.26 第20回「悪意」
2007.11.26 第21回「小さな世界の小さな存在」
2007.12.18 第22回「孤独な年末年始」
2007.12.29 第23回「恩人」
2008.01.08 第24回「友人Y」
2008.01.14 第25回「抑鬱」
 

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2008年01月14日 17:36に投稿されたエントリーのページです。

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