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第24回 友人Y
なぜか互いを「キミ」と呼ぶ。名前でもなく「お前」でもなく。
72年。YとはO小学校で出会った。藤岡弘主演の「仮面ライダー」が流行っていた。ガッシリとした体格に角ばった顔のYはいじめられっこだった。同い年でいじめられっこ同士の俺とYは自然と互いを意識した。気がついたときには「仮面ライダー」の話をしていた。同じクラスだった。
彼とは違うクラスになってもつるんだ。深い付き合いではなかった。いじめを警戒していた。二人でいればいじめられることはあまりなかったが、いじめっこは甘くない。一人になったときに奴らは否応なしにいじめた。
Yとは丘の上のO中学でも一緒だった。当然、いじめっこたちも一緒だ。休憩時間。Yは便所に行こうとした。いじめっこたちが彼を取り囲んだ。Yを掴んだ。柔道の一本背負いのように投げた。さらに蹴りを喰らわせた。何度も投げた。投げられるYの目は便所の方向を据えていた。周りには他生徒たちがいた。誰も助けようなどとしない。俺は傍観者だった。ただ、見ていた。何も言えない。言えば俺がいじめられる。
休憩時間が終わった。いじめっこ数人も他生徒たちも教室に戻った。Yは教室に戻るように促す教師を振り切って便所に向かった。俺はYの強固な意思に感じ入った。
中学卒業と同時にYと別れた。彼は就職した。俺はバイトを転々とし、ひきこもり、精神を病んだ。堕落した。
Yはうまくいっていると噂に聞いていた。仕事も続き、定時制の高校にも通っていると。
T駅で13年振りにYと再会した。偶然だった。久しぶりに話をした。俺と会っていない間、彼も精神を病んでいた。仕事などしていなかった。噂とは違う。俺は当時、世話になっていたKさんのところに彼を紹介した。そして、しばらくYと一緒に働いた。
6年後、俺はKさんの元を離れた。YはKさんの後輩のSさんの元に。クロスの仕事に就き、現在も働いている。
後でわかった。Yとは幼稚園も一緒だった。
去年の夏、彼の母親が亡くなった。俺は神保町小説アカデミーで出された宿題で手一杯だった。葬儀に行けなかったことを今も悔やんでいる。
Yは秘密主義だった。付き合いこそ長かったが、浅かった。ここ2年は会うことも少なくなった。彼は46歳でこれまでに一度もセックスを経験していない。もはや秘密主義ではなくなった。俺との違いはニートであるかどうかだけだ。だが、その違いはあまりに大きい。
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いままでの「絶望男の逆襲」
2007.7.12 第1回「笑顔のない男」
2007.7.18 第2回「孤立感」
2007.7.23 第3回「天涯孤独になるまで」
2007.7.30 第4回「やせ我慢」
2007.8.8 第5回「絶望の根っこ」
2007.8.27 第6回「人間のクズ」
2007.8.27 第7回「登校拒否」
2007.9.3 第8回「昼夜逆転」
2007.9.3 第9回「無常」
2007.9.10 第10回「人から逃げよう」
2007.9.25 第11回「欝屈」
2007.9.25 第12回「願わくば」
2007.10.9 第13回「家族と孤独」
2007.10.22 第14回「歪み」
2007.10.22 第15回「否定できないもの」
2007.11.26 第16回「精神障害」
2007.11.26 第17回「だるま」
2007.11.26 第18回「母の贖罪」
2007.11.26 第19回「因縁」
2007.11.26 第20回「悪意」
2007.11.26 第21回「小さな世界の小さな存在」
2007.12.18 第22回「孤独な年末年始」
2007.12.29 第23回「恩人」
