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第19回 因縁
「危ない!共同出版」(尾崎浩一著:彩図社)という本を買った。サブタイトルに‐夢を食い物にする錯覚商法‐とある。新風舎と松崎義行社長が、今年の7月4日に提訴された。本はその過程を追った内容になっている。
感慨深い。新風舎は共同出版の名のもとに自分の本を出版したい人々の夢を打ち砕いてきた。遂にその報いを受けるときがきたのだ。ちなみに共同出版とは著者と出版社が出版費用を折半し、全国の書店に本が並ぶシステム。が、実際は自費出版と何ら変わらない。折半などない。200万円もの大金を著者からボッタくる(実際の出版にそんな金はかからない)。本が全国の書店に並ぶこともない。すべて大嘘だ。俺はその大嘘に7回は引っ掛かった。ただし、金は取られていない。払える金がなかった。ボッタくられたのは「夢」だけだ。
新風舎出版賞や様々な賞がある。3年くらい前から原稿を送り続けていた。常に落選だった。そして常に共同出版の申し合わせがあった。7回目の原稿は自信作だった。落選しても絶対に出版したかった。共同出版で金をかけてでもと出版編集者と相談。巧みなセールストークに乗せられた。ローンでの出版が1度は決まった。話は二転三転し、結果として出版を断念せざる得なくなった。障害年金から5年かけてのローン払いはクレジット会社に断られた。その瞬間、夢は砕け散った。俺は乗せられ、その気になった自分を恥じた。薄々怪しいと感づいていた。夢に浮かれながらも冷静な部分もあった。やたらに原稿を誉める出版編集者を怪訝に思っていた。
07年6月。俺は「神保町小説アカデミー」に入校した。目標は自分の本の出版。新風舎の共同出版を告発するルポを書くと決めた。あれは詐欺商法だ。許せない。ルポは敷居が高い。アカデミーに入ってからの前期半年は「共同出版」にかかりきりだった。受講でも企画書を提出し、共同出版について語った。新風舎で自費出版をした著者の体験談も聞いた。受講生の協力を得て、情報も集めた(俺にはパソコンがない)。ダメだった。事実となる証拠を必要とした。取材も不可欠だ。講師からは訴訟リスクがあると言われた。出版社を告発する原稿となれば同業者は二の足を踏むとも。出版できるできない以前に俺自身、何も書けてなかった。諦めた。だが、講師の言葉が俺の新風舎への怒りを喚起した。「白井さんは憲法で保証された言論の自由を奪われたんです」。新風舎に送った7つの原稿は闇に消えた。その年の12月。俺は自分の人生について書くことに方向転換した。
新風舎の共同出版に夢を託し、高額の出版費用を取られた挙げ句、肝心の本が出ない。被害者の憤りは想像すらできない。俺は金がないことで被害を免れた。と、言えるだろうか?夢を粉砕された。その点では同じ「被害者」だ。奴らは200万を出さなきゃアンタの原稿は出版する価値がないと言っているのだ。理由はあれど200万もの金を出せる人と20万の金さえない俺。これも現実だ。
訴訟が起こるまではS舎でM社長だった。今は「新風舎」「松崎義行社長」と表せる。共同出版の事実は本になった。俺の役割は終わったのかもしれない。だが、新風舎の件が俺の人生に大きな影響を与えた。企業(社会)とじかに接点を持った。奴らの薄汚さを知った。同時に金がすべての社会。その暗部に嫌悪を覚えた。あの出版編集者と名乗る輩も松崎社長の駒だった。いい感じの女性だったが、営業成績を上げるためのゴマスリをしていただけだ。俺に金ができないと知った途端、一切の連絡を絶った。俺は今も新風舎のことを思うと怒りが沸いてくる。
7回目の実質最後の新風舎出版賞落選原稿は手元にある。プロの編集者に読んで頂いた。本にできる原稿ではないとのことだった。奴らの嘘は証明できた。いずれ「本物」を書く。新風舎よ見ていろ。
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いままでの「絶望男の逆襲」
2007.7.12 第1回「笑顔のない男」
2007.7.18 第2回「孤立感」
2007.7.23 第3回「天涯孤独になるまで」
2007.7.30 第4回「やせ我慢」
2007.8.8 第5回「絶望の根っこ」
2007.8.27 第6回「人間のクズ」
2007.8.27 第7回「登校拒否」
2007.9.3 第8回「昼夜逆転」
2007.9.3 第9回「無常」
2007.9.10 第10回「人から逃げよう」
2007.9.25 第11回「欝屈」
2007.9.25 第12回「願わくば」
2007.10.9 第13回「家族と孤独」
2007.10.22 第14回「歪み」
2007.10.22 第15回「否定できないもの」
2007.11.26 第16回「精神障害」
2007.11.26 第17回「だるま」
2007.11.26 第18回「母の贖罪」
