投稿原稿 元・不登校児 はじめてのアルバイト体験談 藤山隆
僕が不登校だったのは中学を卒業するまでの2、3年でした。しかし高校になってからも何とか出席だけはし、卒業したものの友達もおらずクラスでも孤立していました。大学でも同じように友達はできず土日は家の中でぼーっと寝て過ごすだけでつらかった。これは、このままではいけないと思いアルバイトを始めた時の話です。
今ではそこも辞めてしまい、大学も辞めてしまい、ニートとしてふらふらしているのですが、あの時の経験で、人への恐怖心が幾分回復したように思います。
深夜のシフトを担当していたのは3人で、仮に山本さんと鈴木さんと山田くんとします。
山本さんは60歳近くのおじいさんで、やや頑固な所がある人で、アルバイトに入った頃はいつも怒られていました。人に怒られるの僕弱いんですよ。元不登校児ですし(関係あるのかな?)。それで最初は少しまいっていたのですが、時間がたつと山本さんにも馴染んでいくもので、仕事もずっとやっていれば慣れてきて、理不尽なことで怒ったりはしない人でしたから、次第に仲良くなっていきました。仲良くなる、といっても山本さんがいる時は悪いことはできないな、という気持ちがあって他の時に手を抜くというのとも違うのですが、まぁ一生懸命やりました。
山本さんは昼間普通の会社に9時から5時まで働いていました。コンビニでは仕事が終わってから10時から深夜2時まで、もしくは8時から12時まで働いていた。高校生の息子さんがいるので彼が卒業するまでは頑張るのだと言っていました。でも、そうとう疲労が溜まっていたんだと思います。休憩時間は事務所の椅子を二つ並べて寝転んでいたんですけど休憩が終わっても起きてこないことが続くようになりました。そのアルバイト先の人たちは、そんなことになっても他のバイトが文句を言うわけでもなく山本さんの分の仕事もやってあげてしまうんです。そういった優しい、のんびりとした職場だったので、居心地がよかったのです。
鈴木さんはある宗教団体の信者でした。彼も山本さんと同じシフトに入ったらきついことはほとんど自分がやるというような人でした。争いごとが嫌いで、真面目。とにかくおとなしい人でした。
それでも僕や、これから話すことになる山田くんは若いこともあって悪いこともちょっとやるんです。悪いことといっても、何もレジから金を盗むとかそういうことではなくて、具体的には書けませんが手を抜ける所は抜いて、休憩時間にバック(事務所)で野球(なぜかプラスティックのバットとボールがあった)をするくらいでした。
鈴木さんとはほとんど私語はしませんでした。仲が悪いわけじゃなくって、仕事中は無駄口をたたかないし、休憩中もなんだかずっとあたりさわりのないことを話していた気がします。奥さんと2人でそのコンビニで働いている優しそうな30代前半の夫婦でした。
山田くんは悪な人でした(笑)。中学校しか出ていなくて、僕にさぼり方を教えてくれました。あとしょっちゅう休む時に僕にシフトを押しつけて釣りに出かけちゃったりする、とんでもない人で、でも憎めない所のある人でした。最初に会った時に、少年院に行っていたとか、強盗をしたことがあるとか、そんなことを言われて僕は本気にしておびえていました。
後で山本さんから「そんなのは嘘」と聞かされました。それで僕が「ひどいじゃないですか」と詰め寄ると「そんなこと言ったっけな?」と惚けてしまう。そんな人だったけど、友達のいなかった僕にとっては、たとえコンビ二の事務所で、たとえ勤務時間中とはいえ一緒に野球をやって遊んでくれたことがうれしかったのでたいていのことは許していました。
山田くんには、いろんなことを教えてもらいました。女の人の口説き方、話題に困った時の必殺技、おもしろい話、そんなものです。女の人の落とし方は、半信半疑でしたが、その当時僕は好きな人がいて山田くんのアドバイスに従って、コンビニから携帯で電話をかけたりして、山田くんのアドバイスにしたがって仲良くなっていって、その女の子と付き合えることができました。彼がいなければ内気な性格なので番号を聞くこともできずに終わっていたかもしれません。
彼に面と向かってそんなことは言えなかったけど僕にとっては小学生の時以来久しぶりにできた友達でした。
さて、そんな居心地がよかったコンビニだったのですが、山本さんは息子さんが高校を卒業したのを期に、鈴木さんは宗教団体内での移動で、山田くんはちゃんとした就職が決まったので、みんな辞めていってしまいました。
僕もまた新しい彼女が出来て少しでも一緒にいたかったし、元々お金が欲しくてはじめた訳でなかったので何となく潮時、と思い辞めてしまいました。アルバイトでいくつかの職場を転々としました。そんなに嫌な職場はありませんでしたが、でもやっぱり、最初に働いたコンビニが一人も嫌いな人がいない、一番好きな職場だったなぁと今でも思うのです。〈了〉
藤山 隆
メールアドレス mercibeaucoup0119@mail.goo.ne.jp
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いままでの投稿原稿
2007.7.27 「不登校体験記」
2007.8.3 「ゼロからの自分 イチからのスタート」
2007.8.3 「憂鬱から生まれた歌人」
2007.8.27 「「駅のベンチ」―はじめて学校に行かなかった日―」
2007.9.3 「憂鬱から生まれた歌人」第二話
2007.9.10 「「誰かに伝えてみたいという気持ち」―Cocco「Raining」を聴いていた頃の話―」
2007.9.25 「氷河期世代は行動する」
2007.10.9 「詩」
