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共産主義、入門中 第7回「エリカ様と「世間」」

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第7回 エリカ様と「世間」
  
 映画試写会やテレビ番組で「無愛想」であったという理由で、エリカ様が叩かれている。普通、「愛想のいい人」というのは相手が「無愛想」であるかどうかに関わらず愛想よくしているものである。赤の他人が「無愛想」であると言って怒り出すような人は、その時点でずいぶんと無愛想だと思う。
 
 感情というのは自分の意思でそう簡単にコントロールできるもんじゃないし、仮にできたとしても他人にアレコレ指図されることではない。いつ誰が態度を示どんなそうがその人の勝手じゃないか。
 
 ……という感じでエリカ様バッシングをバッシングしようと思ったのだけど、どうもことはそう単純ではないようだ。
 
 エリカ様がイライラしているように見えたことにイライラしている人たちは、何も人間が色んな感情を持ちうるんだということまで否定しようとはしていない。僕が見たところ、彼らの言い分はこういうものだ。エリカ様の職業はアイドルもしくは女優である。で、試写会とかテレビのインタビューというのは、彼女の「仕事」である。で、そういう場では、ニコニコしているのが女優というものだ。つまり、「問題」なのは、エリカ様が実際にどんな人であるかということや、どんな気持ちだったということではない。彼女が根っからの性悪女だったとしても、それ自体は問題ではない。そうじゃなくて、「不適切」な感情を「仕事」中にオモテに出してしまったということが彼女の「罪」なのだ……。
 
 ああ、そういうことか。ちょっと前に、アイドルが喫煙したり年齢を詐称したりということで問題になったとき、鈴木紗理奈さんはブログにこう書いたそうである。


喫煙しただけで追放になる芸能界ってどないなん?年ごまかしてただけで真面目に謝罪せなあかん芸能界ってどないなん?あたしにとってはどっちも全然たいした問題じゃない
悪い事は一通りしましたが何か????20歳過ぎてからタバコ吸う人の方が少ないやろっ!!!年齢で女を判断する日本の社会がおかしいやろ!!!!芸能人やからって真面目にせなあかんのはおかしくねぇか?等身大でいいやんか。芸能人がみ~~~んな真面目になったら何か夢ないよなぁ

 この文章自体がバッシングの対象になってすぐに削除されてしまったので僕は直接は見ることができなかったけど、僕は100%賛成で、家訓として後世に残すことを決意したほどだ。
 
 これを話題にしている2ちゃんねるのスレやブログをいくつか目にした。未成年が喫煙すること自体が悪であるとか、女の価値は年齢で決まるであるとかいったような意見もあってあきれたけど、もっと複雑な論理で鈴木紗理奈さんにケチをつけている人もいた。
 
 彼らの言い分を僕なりにまとめるとこういうものだ。タバコを吸うかどうかは本人の自由だし、年齢で人間を判断するのはよくないと思う。けれども、アイドルが喫煙したり年齢を偽ったりするのは賢明ではない。なぜならば、「タバコを吸ったりはしない」とか「若い」ということにアイドルの商品価値があるからだ。そこから逸脱したら迫害されるのは当たり前。そういう社会の「お約束」がわからずに素朴に正論をぶっている鈴木紗理奈はバカである……。
 
 彼らは、タバコを吸うなんてケシカラン! とか、女優ならカメラの前では愛想よくしろよ、などという野暮なことは、自分では言わない。そうじゃなくて、そんなことだと世間から叩かれるよ、と言って叩くのだ。
 
 なるほど、タバコを吸った加護ちゃんは実際に芸能界から追放になった。エリカ様の場合は「逆にああいうのがいい」というファンもいるようだからどうなるかは微妙なところだけど、とりあえず今のところは苦境に立たされていることは確かだろう。その意味で、彼女らの行動は、本人の利益に反するものだったと言えるかもしれない。
 
 けど、たとえば安重根という人は侵略者・伊藤博文を暗殺して死刑になったけど、彼が英雄であることを疑う人は今日ではいないだろう。仮にタイムマシーンが発明されたとして、「あなたの気持ちはわかるが、日本の要人を暗殺したりしたら死刑になりますよ」などと諌めにいく人がはたしてあるだろうか? そんなのは日本の回し者でしかない。安重根に対する評価は、日本帝国主義に対する評価を抜きにしてはありえない。
 
 未成年がタバコを吸うのは悪いことだとか、女優はニコニコしていろだとかいうような意見は間違っていると思う。けれどそれ以上に悪質なのは、別に自分はそうは思わないけど、そういう社会の掟に刃向うと痛い目に遭うのにそうするなんてああバカだね、というような人々である。彼らは「中立」を装い、「世間」の影に隠れている。だが、そういうものこそが世間に他ならないのだと思う。
 
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いままでの「共産主義、入門中」

2007.7.13 第1回「宝くじと教育の不平等」
2007.7.23 第2回「努力が報われる社会」にNO!
2007.7.30 第3回「「第三の道」はいらない」
2007.8.8 第4回「仮病で何が悪い」
2007.9.3 第5回「「弱者による暴力」に対する暴力について」
2007.9.25 第6回「映画『こぼれる月』」
 

コメント (4)

みっきー さんのコメント

このエントリーの本題からはずれているかもしれませんが、沢尻エリカの件は自身の主演した映画の舞台挨拶においてでした。つまり宣伝で来ているわけです。例えばスポンサーやパトロンに悪い態度を取れるでしょうか?そんなことをしたら、支援を受けられなくなるのは当然の話で、舞台挨拶を適当にするというのは、それと同じ事です。

自分がやっていることの意味を把握しないで、事務所に言われたから舞台挨拶には嫌々出るっていうような態度は良くないとしか言いようがないでしょう。

・・・ということに本人も気がついての謝罪です。だから、彼女の行動は「プロとしてあってはならないことで、そして人として、まだまだ未熟だったゆえの事だと思います」
なので、その行為を肯定的にとらえるというのは、本人に対しても失礼な事です。謝罪とその決意を、肯定的にとらえてあげるべきです。

安重根と根本的に違うのは、本人がそうすべきだと判断して、そう振る舞ったわけじゃなかったという点です。

うまく伝わるかわかりませんが、このエントリーに感じた違和感が少しでも伝われば幸いです。

ツネノ さんのコメント

みっきーさん、こんにちは。舞台挨拶での振舞いやその後の謝罪についての本人の「意図」は、本人以外にはわからないと思います。

で、僕が問題にしているのは、各個人に割り振られた社会的役割からの逸脱ということです。あのような行動が彼女に与えられた役割から外れたものであるということについては僕もまあそうかもしれないと思います。でも僕は、人間は与えられた役割から逃れる自由を持っていると考えるのです。

沢尻さんに安重根のような政治的な意図があったかどうかは知りませんし、誰にもわからないでしょう。ただ両者に共通しているのは、「~しなくてはならない・~してはならない」という社会の掟に刃向ったことだと思います。その点において、二人の行動は人間の自由というテーマについて考える材料を提供していると言えるのではないでしょうか?

へうたむ さんのコメント

この前のコメントはご承認いただけなかったでしょうか?(この投稿は無視していただいてけっこうです。)

へうたむ さんのコメント

あれ~、問合せコメントのほうはすぐ反映してる~^^;。前のコメントは‥‥忘レテシマッタ(泣)orz... 思い出しつつ…
沢尻さんの件で感じたのは、司会のアナウンサーがずいぶん気を遣っていたらしいことでした。のちに日テレ・ZEROのインタヴューでは、小林麻央さんがほんとうに腫れ物に触わるていで話しかけていたのが痛々しかった。こういう遣り取りで連想するのが、郵便局や定食屋でこのところよく見かける、スタッフを怒鳴りつけている客です。落ち度はあったでしょうけど、仕事とはいえここまで罵詈雑言の限りを浴びせられて「申しわけございません」と頭を下げ続けなくてはならない‘関係’っていったいなんだ、とモーレツにこっちが腹が立つ…。沢尻さんと司会者はプロ同士ですから、ちょっと違った位相ですが、それでもなあ、と思った次第。
もうひとつ、こういうバッシング対象は、亀田家もそうですが、メディアの莫大な金儲けに直結する、そういう‘機能’がきわめて大きいですね。「本人の「意図」は、本人以外にはわか」りませんが、‘役割’はかなり明確なんじゃないか。「各個人に割り振られた社会的役割からの逸脱」に関しては、逆に、沢尻さんはみごとに役割を果たしたのでもあります。‘逸脱’と‘適応’はちょうど‘闇’と‘光’のようにセットで構造を成し、しかも沢尻さんは一見‘逸脱’の側にいて実は‘適応’を演じており、次にはほんとうに‘逸脱’の側に追いやられてしまう、という、〈善玉vs悪玉〉というのを超える、ゲシュタルトのどっち側にも量子論的に「観測された=見出だされた」側にいる、という微妙な関係で、メディアはこうしたゲシュタルト(と言っていいのか^^)全体から収奪するのです。
混乱してきたので、おやすみなさい。m(_ _;)m

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2007年10月09日 05:40に投稿されたエントリーのページです。

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