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第9回 無情
07年8月30日木曜日。午前中にダイエーに行った。いつもの義務だ。この3年、母の代わりに俺が食物や日用雑貨を買っている。うちは常に現金がない状態で買い物のほとんどはダイエー。クレジットカードを使っている。
この日も同じように買い物をし、清算が済んだ。レジの店員にカードを。通らない。店員はクレジット会社への問い合わせを勧めた。後ろには客が並んでいる。いい見世物だ。買い物カゴには弁当などの食物がごっそり入ったまま。俺はレジに置かれた買い物カゴを尻目にその場を離れた。カード会社と電話しても事態は変わらない。カード無効。使用は次回支払い2~3日後。奴らはマニュアルどおりの返答しかできない。
弟の給料日は月末。支払いは月初めにしている。毎月必ず振り込んでいる。滞ったことはない。こんなトラブルは3度目だ。1度目は持ちあわせがあった。2度目はカード会社と電話でやりあった。今回はパターンが読めた。限度額を越えたのだ。
クレジットカードは現金なしで物が買える。高い物ならリボ払いにすればいい。何でも思うままだと錯覚する。
俺は映画007シリーズ全20巻のDVDを揃えようと次々と買った。1度ハマると止まらない。現金払いなら抑制できた。クレジットカードは金銭感覚をマヒさせる。働いている弟のためにと高いすしも買った。クソ暑さが冷静さを奪う。結果、請求額が増える。カードは無効にされ、俺は赤っ恥をかく。家族に対し、罪悪感でいっぱいになる。金を払うのは弟で家計を調整するのは母なのだ。
クレジット会社は家庭事情などお構いなし。機械的に処理し、カードを予告なしに無効にする。電話の対応も機械的だ。俺が感情に訴えると口ごもる。マニュアルにないから応えようがない。そう教育されているのだろう。効率優先システムか。より生産的にか。
支払いは今日(9月3日)。が、クレジット会社が入金を確認するまで2~3日は待つのだ(どこが効率的だ!)。それまで支払い額から差し引き、捻出した金で食っていかねばならない。健康保険料を来月にずらすと母は言う。それでもぎりぎりだ。こうなったのは自分のせいだと罪悪感に苦しんでいる。母に「俺が悪い。俺なんか死んだ方がいいだろ」と吐き出した。母は「みんなも同じ物を食べてるんだから」と言った。少し救われた。
効率的で生産的であることが優先。それが今の世の中らしい。まるで管理社会だ(そうなっている)。情や思いやりといった人間らしさは映画やテレビドラマのなかにしか存在しなくなったのか。今にすべてがシステム化し、人間らしさは置き去りになる。ならば俺は非効率的で非生産的な生き方を実践したい。今までもそんなふうに生きてきた。ささやかなシステム社会への抵抗だ。
1つ気になることがある。あの買い物カゴのなかの商品。1つ1つを元の場所に戻すのだろうか。その作業をするのは店員か。だとしたら大変だろうな。
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いままでの「絶望男の逆襲」
2007.7.12 第1回「笑顔のない男」
2007.7.18 第2回「孤立感」
2007.7.23 第3回「天涯孤独になるまで」
2007.7.30 第4回「やせ我慢」
2007.8.8 第5回「絶望の根っこ」
2007.8.27 第6回「人間のクズ」
2007.8.27 第7回「登校拒否」
2007.9.3 第8回「昼夜逆転」
