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第8回 昼夜逆転
8月も末になった。なのに朝から暑い。蝉の鳴き声が耳に響く。秋はまだまだ先だと囁いているかのようだ。昨夜も暑くて眠りづらかった。それでも6時間は眠れた。少しずつでも涼しくなってきている。秋は近い。
今の俺は規則正しい生活を守っている。朝7時前に起きる。ゴミ出しをして、洗顔をし、新聞に目をとおし、ハーブティーを煮出し、それを飲む。朝食時には朝の連続テレビ小説「どんど晴れ」を見る。一日が始まる。特別な用事がない限りは大抵そうだ。日中、用事の合間に2時間ほど睡眠をとる場合もある。夜は23時前後に寝る。この生活パターンにすっかり慣れた。お陰である程度の健康は保てている。
かつては違った。小学校2年生の頃の俺は貧弱だった。身体は骨が浮き出るほどにやせていた。ボロ切れのような服でヨロヨロと登校した。朝礼では常に前列に並ばされた。背が低かった。気分が悪い。立っていられない。2分と持たずに俺は倒れた。そして、保健室に運ばれた。そんなことは登校のたびにあった。家でろくに飯を食えない。ひどい飯だった。貧乏なうちに朝飯をしっかりとる余裕はなかった。夜眠れないのもあった。なぜ眠れないのか理由はわからない。睡眠不足が体力を奪っていた。おかずのないグチャグチャのご飯でも食わないよりはマシだろう。だが、朝から具合が悪くて食えない。しかも親父は学校へ行けと脅しをかける。奴の心配はかかる学費だ。
小学3年の中頃に1度目の引っ越しをした。親父は木材加工の仕事に転職。収入が増え、俺は貧弱ではなくなった。体力もついた。が、相変わらず夜眠れなかった。学校も休みがちになり、5年からは仮病を装って、ほとんど登校しなかった。中学時代は休みながらも結構出た。小学校同様、卒業はできた。
その後、昼夜逆転が始まった。夜眠れないから朝仕事に出られない。出ても午前中に家に戻り、布団をかぶって眠った。癖になった。夜はテレビを朝まで見た。テレビを親父に禁止されるとラジオを聴いた。睡眠は日中。午前9時頃から夕方まで眠った。時々は外出し、バイトに出た。体調を崩し始めた。精神面もおかしくなった。食いに食った。吐くまで食った。腹だけが異様に膨れた。頭痛がひんぱんに起こった。キレやすくなった。母を突き飛ばした。意味なく怒鳴った。たまに夜眠ろうと「努力」した。だが、眠ろうとすればするほど眠れず、苦しい夜を過ごした。
鬱病だとわかった。20歳から精神病院に通院し始めた。以来も昼夜逆転を繰り返した。薬の量を増やした。一日に10錠以上を飲んだ。前後不覚になった。夢と現実の区別がつかなくなった。「やばい」と思った。
30代後半から薬を1種類(安定剤)に減らした。日中、どんなに眠くても、退屈で孤独でも眠らなかった。夜眠る習慣を身につけた。
規則正しい生活パターンが今の自分を創っている。未だ不安定ではあるが昼夜逆転を抜け出せた。「できない」を「できる」に変えたのだ。
感想はこちらへ![]()
いままでの「絶望男の逆襲」
2007.7.12 第1回「笑顔のない男」
2007.7.18 第2回「孤立感」
2007.7.23 第3回「天涯孤独になるまで」
2007.7.30 第4回「やせ我慢」
2007.8.8 第5回「絶望の根っこ」
2007.8.27 第6回「人間のクズ」
2007.8.27 第7回「登校拒否」

コメント (1)
どうもはじめまして!レン空です。
規則正しい生活は僕も大事だと思います。
リズムを変えたのはすごいですね!
やはり、健康と体力が、日常と戦う力の源だと思うのです。
カラダですよ。カラダ!!
投稿者: 遠藤一 | 2007年09月07日 01:40