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第12回 願わくば
ほぼ毎日ダイエーに行く。午前中に買い物を済ます。午後の時間を空けるために。行きは歩く。約40分の距離を。夏は汗だくになる。帰りはバスだ。荷物を両手に持ったまま歩くのはさすがにしんどい。精神障害者用の特別乗車券がある。バスはタダだ。歩く理由は健康のため。3年半、続けている。
歩くと様々な人とすれ違う。午前なので、女性や老人が多い。若い主婦や女子校生も歩いている。俺の前を脚にピッチリ密着したジーンズの女性が歩いている。ケツと脚に目が行く。太股がそそる。ジックリ見ていたいがそうもいかない。帰りのバス。隣の座席に高校生同士のカップルが来た。盛んに喋り合う。いちゃつきから目をそらし、無視しようと頭のなかで何か考える。窓から外を見る。ミニスカの女子校生が闊歩している。日常風景にすぎない。だが、カップルにムカつき、女子校生に欲情する自分がそこにいる。
45年間1度も恋人を得たことがない。異性と性的快楽を目的に触れ合った場所は性風俗。20代後半の約3年間、仕事で得た金で行った。その前後の人生で異性との触れ合いは皆無。キスの仕方も知らない。性的処理はオナニーのみだ。
中学生の頃、SM写真集を買った。両親に見つからないないよう押し入れに隠した。誰もいない合間に見た。女性が縛られる姿に異様な興奮を覚えた。ふつうのエロ雑誌もずいぶん見たが、SMは自分のなかで特別な位置にあった。実行できないだけに余計に妄想をかきたてた。
現実はSMとは違う。所詮、妄想だ。20代前半のある日、銀座で映画を観た。終わって山野楽器に寄った。2階にチケット売り場があり、ガラスケースに当時好きだったマンハッタン・トランスファーのライヴのチケットがあった。女性店員が2人いた。俺はチケットが幾らで座席はどこら辺か知りたかった。だが、店員に声をかけられない。声をかけようと思うと動悸が激しくなり、汗が吹き出した。女性が怖い。俺は1階に行ったり、売り場の前をうろついた。女性店員が不審そうに俺を見る。近づけない。だが、チケットはほしい。意を決した。女性店員が後ろを向いた瞬間、肩を軽く触れる程度に叩いた。店員は奥にサッと走った。逃げたのだ。もう1人が逃げた店員をかばうように俺に近づき、用を聞いた。チケットのことはわからなかった。話などできない。そこを急ぎ足で去った。店から外に。歩いている間、惨めさに涙が溢れた。有楽町まで走った。さらに動悸が激しくなった。
小学3年の頃、学校で女の子数人にいじめられた。怖かった。いじめは存在の拒絶だ。以来、ずっと拒絶への怖れを異性に抱いている。“女は俺を拒む”という思い込み。それは自分の自信の無さの表れかもしれない。俺の人生には母親以外の異性が存在しない。友人、知人はいても恋愛とは無縁だ。1度でも恋愛目的の恋人を得たら変わるかもしれない。それは母親からの脱却にもつながる。一人立ちへのきっかけになる。そうなりたい。願わくば。
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いままでの「絶望男の逆襲」
2007.7.12 第1回「笑顔のない男」
2007.7.18 第2回「孤立感」
2007.7.23 第3回「天涯孤独になるまで」
2007.7.30 第4回「やせ我慢」
2007.8.8 第5回「絶望の根っこ」
2007.8.27 第6回「人間のクズ」
2007.8.27 第7回「登校拒否」
2007.9.3 第8回「昼夜逆転」
2007.9.3 第9回「無常」
2007.9.10 第10回「人から逃げよう」
2007.9.25 第11回「欝屈」

コメント (1)
白井さん、大丈夫です。
逃げられるのはナンパではよくあることです。
背後から女性に触れるのは、相手に警戒心を与えるので、よくありません。また女性は警戒心が高いので、相手が白井さんの視線に気づいてしまったのもマイナスに作用したと思われます。
次回は、女性に出会った瞬間、3秒以内に「すみません」と正面、または横から声をかければ大丈夫です。
投稿者: リョウ | 2007年09月25日 16:18