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絶望男の逆襲 第10回「人から逃げよう」

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第10回 人から逃げよう
  
3月末に[神保町小説アカデミー]が終了して4ヶ月経った。以来、すっかり人と会わなくなった。アカデミー受講中は週に2日は誰かと接していた。親しくなった受講生は特にいない。友人になれそうな人はいたが、アホらしい誤解のせいで関係が破綻した。
 
人間関係が苦手だ。学校も職場も他者と接することが苦痛で中途放棄した。10代後半からひきこもりに入った。一人部屋の窓全部に映画のポスターを貼り、外から見えないようにした。ドアをロックした。飯は親父のいない間に家族部屋で食った。夕飯は母が盆で持ってきてくれた。酔った親父に邪魔されながらも。母以外誰も部屋に入れなかった。誰かがドアを叩いたときは布団に潜り込んだ。
 
外出時。辺りを窺い、人がいないことを確認。2階から階下に素早く下りる。寮の1階に職場がある。人が通る。出口を目指して突っ走る。誰にも見つからなければいい。映画を観に行くか、映画雑誌を買いに行ける。帰宅時も同じ。人がいない隙にサッと2階に上がる。ドアをロックし、自分の世界に入る。77年から約10年間、K工業での体験。
 
小便を催した。ちょうど仕事が終わる17時頃。仕事を終えた人たちが各部屋に戻り、廊下で何やらかにやら。この寮は共同便所だ。俺の部屋から20メートル先にある。出られない。出れば人に会う。説教を食らう。嫌みな視線にさらされる。が、尿意が我慢の限界まできていた。俺は股間を両手で押さえ、人が部屋に戻るのを待った。20分。誰も戻らない。声でわかる。さらに20分。変化なし。俺はうずくまった。フルーツの空き缶を見つけた。助かった。小便を空き缶に放出した。18時半を回った。人は部屋に引っ込んだ。俺は酸っぱい匂いの空き缶を持った。共同便所の便器に黄色い水を捨てた。独り、小便臭い部屋に戻った。自分の世界に入った。
 
外に出たり、出なかったり。中途なひきこもりだった。現G団地に越して20年が経った。外出も小便もまあまあ自由にできる。が、他者との接点が見つからない。今も人が怖い。批判を恐れ、人間関係から逃げている。なのに人を欲してしまう。いや違う。本当にほしいのは居心地のいい(安全な)人間関係である。そして(何より)異性の恋人だ。叶わぬ夢か。ならば人から逃げ続けようか。
 
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いままでの「絶望男の逆襲」

2007.7.12 第1回「笑顔のない男」
2007.7.18 第2回「孤立感」
2007.7.23 第3回「天涯孤独になるまで」
2007.7.30 第4回「やせ我慢」
2007.8.8 第5回「絶望の根っこ」
2007.8.27 第6回「人間のクズ」
2007.8.27 第7回「登校拒否」
2007.9.3 第8回「昼夜逆転」
2007.9.3 第9回「無常」
 

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2007年09月10日 17:16に投稿されたエントリーのページです。

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