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絶望男の逆襲 第5回「絶望の根っこ」

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第5回 絶望の根っこ
 
このブログは文章を携帯のメールに打ち込んだものをANNのHPに送っている。パソコンを持たない(今後も持つ予定はない)俺は《絶望男》にどんな反響があるのかわからない。読まれているのだろうか?だとしたらどんな感想があるのだろうか?状況が見えない。
 
今年の夏も暑い。ゲンナリする。親父は15年前のこんな夏に死んだ。享年68歳。死因は急性肺炎。生前の親父も周りの状況が見えなかった。聞こえなかった。聾唖者(聴覚障害者)だった。そしてアルコール中毒者だった。
 
68年のある晩。7歳の俺は外の足音に聞き耳を立てた。ヨロヨロとしながらもこちらに向かってくる靴音が聞こえたその瞬間、心臓の動悸が高鳴った。母も弟も覚悟を決めたのだろう。6畳の窓のない部屋の隅にいる。俺は少し間を空けて座っていた。親父は戸を開けた。と同時に倒れ込んだ。奴は顔を上げるとキッと俺たちをにらみつけた。白髪が逆立ち、細身の身体に作業服姿の奴は立ち上がるや母の身体を蹴った。うずくまる母に扇風機を投げつけた。さらに馬乗りになり、母の後ろ頭にゲンコツを叩きつけた。弟は泣いている。奴は怒鳴りながら弟を押し入れに閉じ込めた。酒の臭気が部屋中に漂った。俺は母を殴ろうとする親父の肩に触れた。助けたかった。奴は俺の腕を取り、ひねりあげた。頬を張られた。頭をゲンコツで数度殴られた。頭の中に電流が走った。押し入れに叩き込まれた。暗闇の中で2時間を過ごした。母が開けてくれた。奴は寝ていた。終わったわけではない。再び親父が目覚めたときが怖い。酔いがある程度醒めたときの奴の力はより強くなる。そうならないことを願った。
 
毎日続いた。標的は3人の誰かだ。大抵は母が盾になった。俺はこの頃から誰も助けてくれない世の中を呪った。逃げ場はどこにもなかった。自分の身は自分で守るしかないと思った。そして、心を閉ざした。
 
以来、23年間、親父は暴力で家族を支配し続けた。何が親父をそうさせたのか。家族を自分の意のままにすることが望みだったのか。
 
俺は暴力親父の遺伝子を受け継いでいる。だが、奴のようにはなりたくない。酒は一切呑まない。他者に暴力を振るわない。が、否定し難い事実がある。
 
状況や周りが見えない。見ようとしない。怒りを溜め込み、ときに爆発させる。俺は心の聾唖者だ。酒こそ呑まないが孤独な現実に酔っている。
 
今だからいえる。親父は淋しかった。誰とも話せず、家族に暴力でコミュニケーションを取るしか選択肢がなかった。奴は憐れだ。
 
かつて10~20代の頃、奴を本気で殺したかった。何度も「ぶっ殺す」と母に怒鳴った。結局は殺せなかったが。
 
俺の自由も青春も親父に奪われた。だが、奴だけじゃない。親父もある意味被害者だった。親戚は許し難い敵だ。俺ら家族に逃げ場を与えなかった。口先だけで何もしなかった。その親戚を象徴するものは社会である。その意識に目覚めるときがきている。このままでいられない。
 
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いままでの「絶望男の逆襲」

2007.7.12 第1回「笑顔のない男」
2007.7.18 第2回「孤立感」
2007.7.23 第3回「天涯孤独になるまで」
2007.7.30 第4回「やせ我慢」
 

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2007年08月08日 17:00に投稿されたエントリーのページです。

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