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共産主義、入門中 第4回「仮病で何が悪い」

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第4回 仮病で何が悪い
 
 朝青龍という力士がいじめにあっているようだ。
 
 ネットでちょっと検索しただけなんだけど、どうもこういうことらしい。横綱は、疲労骨折を理由に巡業を休場することにしてモンゴルに帰国した。その母国でサッカーを楽しむ様子が日本のテレビで報じられて、「仮病」ではないかという疑いがかけられる。結果として、相撲協会は朝青龍に二場所出場停止、「謹慎」、減給などの処分を下した……。
 
 たとえば、友人が骨折したという話を聞いたとしよう。心配だ。早くよくなればいいと願う。その友人が元気にスポーツをしているのを見たら、どう思うだろうか?
 
 なんだ、こんなにピンピンしてるじゃんか。まったく、心配させやがって。よかったよかった――まずは、こんな安堵や喜びといった感情が湧いてくるのが自然じゃないだろうか? それか、もうしばらくは安静にしてた方がいいじゃないの、と不安になるかもしれない。
 
 ところが、横綱を非難している人々はそうは考えない。まるで、傷が深いことを望んでるみたいだ。彼らの心配事は、朝青龍の体ではない。それよりも、自分が騙されてるかもしれないということの方が大事なんだ。マスコミの人々は、元気そうな朝青龍を見て喜ぶのではなく、「裏切られた」という怒りの感情を煽っている。
 
 横綱の「疲労骨折」などが「仮病」なのかどうか、僕にはわからない。ただ、病気や障害というのは外から簡単に観察できないこともあるし、ちょっとスポーツができるからといって健康であるとは限らない、ってくらいのことはわかる。だから、マスコミが何を根拠に「仮病疑惑」なんて言っているのか謎だ。
 
 でもそんなことより、もし仮病だったとしたら、それがどうしたっていうんだろう。
 
 ああ、明日から仕事だ。行きたくないなあ。もう学校はイヤだ。ここではないどっかに行きたい――僕はこんなふうに思うことがこれまでに何度もあった。だから、何らかの理由で、あるいは理由もなく、次の巡業は休みたいと仮に横綱が思ったとしても、別に不思議なことだとは感じない。
 
 僕は、インフルエンザで高熱が出たときは働きたくなかった。でも、体はピンピンしてようが、仕事に行きたくない日もあった。疲労骨折で体が痛いのだったら相撲のようなハードな運動は避けるべきだ。けれど、体に問題はなくても、休みたくなることだってあるだろうと思う。
 
 もし朝青龍の疲労骨折が「仮病」なんだとしても、問題は相撲協会やマスコミや世間が「騙された」とかってことなんかじゃない。仕事を休むのに「病気」にならなきゃならなかったってことの方こそが問題なんだ。何か「理由」がないと休めないなんて、そっちの方がどうかしてる。
 
 「仮病」がこんな大問題になってしまう社会では、理由なくただ休むということは難しいだろう。そしてだからこそ、人は「病気」にならざるをえないことだってあるかもしれない。仮病を許さない社会が仮病を生み出している。逆に、仮病の疑いがあろうが詮索したりバッシングしたりしないような社会なら、そもそも仮病になる必要もないだろう。
 
 朝青龍を非難している人々に言いたいのは、これはあなたや僕自身の問題なのだということだ。朝青龍を叩けばウップンが晴れるかもしれない。けど、そうするときに我々が使っている武器は石でも矢でもなく、ブーメランである。ここで横綱をイケニエにしてしまったら、僕らは自分自身の自由を売り渡すことになる。
 
 朝青龍のケガが「仮病」かどうかなんてことを問題にしてしまったら、次に休みたくなったとき、逃げ出したくなったとき、僕らは世間様に申しわけの立つ「理由」を探さなければならなくなるだろう。僕らは「病気」になるかもしれない。そして世間様の納得するような「病人」らしい病人であり続けることに失敗して、石を投げられることになるかもしれない。
 
 朝青龍の疲労骨折が深刻なものであったにせよ、「仮病」だったのにせよ、彼がサッカーをする様子がテレビで流れなければこんな「問題」にはならなかっただろう。YouTubeやニコニコ動画でこの映像を見た。横綱、なんて楽しそうなんだ。なんて生き生きしてるんだ。この姿を見てなんで素直に微笑むことができないんだろうか? なんで鬼の首でも取ったかのように叩かなきゃならないんだろう。
 
 それから10日ほどした現在、非難を浴びてきた朝青龍は「抑うつ状態」なのだそうだ。これもまた「仮病」だとか言い出す人がいるかもしれない。
 
 必死になって足を引っ張り合い、生きることをつまらなくしようとしている。自由を貶めている。これが今の僕らの姿だ。
 

 

 
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いままでの「共産主義、入門中」

2007.7.13 第1回「宝くじと教育の不平等」
2007.7.23 第2回「努力が報われる社会」にNO!
2007.7.30 第3回「「第三の道」はいらない」
 

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コメント (2)

ゆかり さんのコメント

ひどい映像だね。
これを見た私の方が驚きましたよ。

ちなみにこの程度の腰の疲労骨折と
肘の故障なら、映像にあった程度のサッカーを
することは可能だと複数の整形外科医が
言ってます。
又聞きですけどね。

松本 さんのコメント

私は最初にこの一連のニュースの見出しを見たとき、「ほのぼのした笑える話題」として報道されてるんだと思っていました。どう考えても相撲協会の対応の方が滑稽です。

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2007年08月08日 17:28に投稿されたエントリーのページです。

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