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第3回 天涯孤独になるまで
今の俺には母と弟の2人の家族しかいない。
親類との付き合いは一切なく、
生活をともにできるパートナー(恋人、友人)もいない。
45歳になるまで1度も家族から離れて暮らした経験がない。
俺のなかに一人暮らしという発想そのものもなかった。
今年の5月に自立生活をしているライターに会った。
以前、鬱をテーマに俺を取材した人だ。
その人から言われた。
「一人暮らしした方がいいですよ」と。
精神障害者でも生活保護を受け、一人暮らしができる。
そのように世話してくれる人がいる。
その人を紹介するからとメールアドレスを教えてもらった
。言われたときはその気だった。
家族と一緒に居ることに限界を感じていた。
創作活動や自由な外出(帰宅時間を気にして)もままならない状態に
息が詰まる思いをしていた。
が、その気はなくなった。
創作活動?
作家になる夢を諦め、何も書かなくなった俺には無意味な言葉だ。
自由な外出?
金に制限のあるなかで何が外出か。
人は何とでも言える。他人ごとだから。
俺は一人暮らしという幻想を捨てた。
母は現在77歳。
身体障害者ながら洗濯や弟の仕事の世話など
家のなかでできる家事をこなしている。
弟は43歳。
糖尿病を患いながらも毎日働いて家計を支えている。
俺は買い物や月々の支払いなど外回りの仕事をしている。
母と弟と俺の3人がそれぞれの役割をこなすことで食っていけている。
だが、いつまでも同じような生活が続くとは思っていない。
人は誰でもいつかは必ず死ぬ。
金持ちも貧乏人も関係ない。
誰にも等しく死は訪れる。
母の死は近い。
身体は日々弱っている。
母自身もいつか訪れる死を自覚している。
弟はいつでも自立できる。
仕事ができ、自分の車も持っている。
家族と暮らすのは独身の彼には都合がいいからだ。
母も弟もいずれは去る。
無理をして一人暮らしなどしなくても俺は独りになるのだ。
だが、そうなるとは限らない。
3人のなかで誰が先に家族から離脱するのだろうか。
アルコール依存症で酒乱の父は
15年前に死というかたちで家族から離脱した。
父の生きた時代は我々家族にとって、生き地獄だった。
以来、日々を淡々とだが、平穏に過ごせるようになった。
未だに貧乏で生活は楽ではないが、
俺にも家族にも「今」が大切なのだ。
グダグダ言ってられない。
家族など同じ屋根の下に住む同居人に過ぎない。
互いを利用して生きていく。それが家族ではないか?
天涯孤独はおおげさな感じがする。
人は関係性のなかで生きている。
関係を否定したら孤独じゃなくなるだろ。
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いままでの「絶望男の逆襲」
2007.7.12 第1回「笑顔のない男」
2007.7.18 第2回「孤立感」
